恋宿~イケメン支配人に恋して~



『あっ!もしもし理子!?あんた今どこに居るの!会社から“退社関係の書類を出してほしいから会社に送るように”って連絡来たんだけど!退社ってどういうこと!?それと慎くんと別れたんですって!?スーパーで行きあって挨拶したら、もう別れたんですって言われたわよ!?なのに何日も帰らないで……』



その瞬間、ガーッとマシンガンのように話すお母さんの声が受話器から一気に聞こえてくる。



う、うわぁ……バレてる。すごい問いただしてる。

返事もしていないのにひたすら喋り続ける電話の向こうの母に、つい苦笑いがこぼれる。



『聞いてるの!?理子!ちょっと!!』

「あー……はい、えーと、いろいろありまして……」

『元気なのね!?ならいいけど……とにかく1回帰って来なさい!!わかった!?』

「……はい」



それだけを言うと、せっかちな母はブチンッと電話を切った。

とりあえず声が聞けたことと私が何でもないこと、そして『1度帰る』と約束したことで納得したのだろう。



通話を終えた携帯をしまいながら、ふと隣の存在を思い出し恐る恐る顔を上げる。

あれだけの声の大きさだ。それは当然、すぐ隣にいた千冬さんにも聞こえていたわけで……。



「っ……だから言っただろうが!このバカ女ーーー!!!!」

「す、すみません!」



電話の向こうも大変だけど、こっちはもっと大変だ……!






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