vivre【1】
その中にある店のひとつに3人は足を運んだ。

「やあ」

青年が中に声を掛けると、奥で作業していた男が顔をあげた。
青白い顔に煤けたローブ、細い枯れ枝のような腕や指には不気味な色の宝石をあしらった指輪や腕輪。

「あー…。久し振りー…」

眠たげに放たれた声は、意外にも若かった。

「んー?そっちのお嬢さんは魔術師かなー…?まだ駆け出しかー…」

ヴァレリーは驚いて目を見開いている。
青年はそれを無視して、目の前の男を見つめた。

「適当に見繕ってくれよ。また後で来る。お前は残れよ」

「え!あ…はい」

ヴァレリーは観念したように項垂れると、店を後にする青年とオルガを見送った。



店を出た青年とオルガが次に向かったのは、ヒーラーギルドだった。
ここでは怪しげな店に入ることはなく、オルガの為に新しい杖とローブ、それと解毒薬をいくつか買った。

「あの、なんだかすみません…」

オルガが言うと、青年は首を横に振った。

「依頼だからな」

「…そう、ですか」

困ったように微笑むと、オルガはそれ以上なにも言わなかった。

ヴァレリーを迎えに魔術師ギルドにある店に戻ると、ちょうどヴァレリーの用意も整ったようだった。

魔術師用の杖と、魔力増幅のサークレット、そしてイヤリング。

「僕としてはさー…杖はもうワンランク上がいいと思うんだけどねー…。彼女、重いっていうからー…」

使用者に見合わない武器は、軽々しく扱えるものではないのだ。
だが、青年は感心する。

今ヴァレリーが持っている杖は、魔術に詳しくない青年でもわかる程度には名のある名工が作ったもので、それなりに実力…というより魔力の高いものでなければ扱えない代物だ。
それがギリギリといえ持てているということは、ヴァレリーは経験さえ積めばそれなりにいい魔術師になるのかもしれない。

「助かった。金はいつもの方法でいいな?」

「構いませんよー…」

ヒラヒラと手を振る男に見送られながら3人は店を後にした。

その後も、度に必要な保存食の確保や、旅に使う寝袋などを用意しているうちに、あっという間に一日が過ぎた。

「今日はありがとうございました」

ヴァレリーが青年に言うと、青年はなにも言わず頷くだけだった。

「あの、ちゃんとお金、返しますから…」

無知というのは幸せな事だ。
今日彼女達に買い与えた装備品だけで、無駄遣いしなければ2ヶ月は食べていける。

それでも、彼女達が課題を終えて作るマジックアイテムの方がはるかに高いのだが。
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