愛結の隣に悠ちゃん


「「ふざけるなっ!前野帝臣!お前の好きにはさせない!」」

火鏡崎野と悠人の声がハモりながら聞こえる。

悠人の中に火鏡崎野が憑依したのだ。

「好きに……?はっ、好きもどうもない……」

軽く笑えば顔をふいっと反らす。
しかし、その行動により反感を買う。

「前までは……そなたのことなど大嫌いでしかなかったが……今だけは……どうやら、同じ考えのようだな」

「そうだね……アンタの考えに乗るよ、僕もちょうどムカついたし」

先程まで黙っていた新富南邪と奈良富爾がお互いに顔を見合わせて悠人の横に並び前野帝臣の前まで歩く。

「ん……新富南邪と奈良富爾がなんだ。なにかようか」

二人にたいしては表情を穏やかにして笑う。
しかし、新富南邪と奈良富爾の表情は決して穏やかではない。

「ふふっ。おじさんとおばさんには仲良くなってもらいたかったけど……おばさんが可哀想だからおじさんにはおばさんのこと、任せられないね」

「はっ、こっちこそごめん被る。……そなたのような者に一時でも心揺らされてしまったこちらの気持ちを返していただきたいものよ……」

扇子で奈良富爾が自分の口元を隠しながら言えば、懐から札を出す。
新富南邪は着物の袖から札を取り出して顔の前に持ってきて目をつむり、ぶつぶつと呪文を唱え始める。

「ぐ、っ……ぅあああああ!」

前野帝臣が体を押さえて横たわる。
すると、火鏡崎野と同じようにすぅっと姿を消してしまった。

「ふふっ、神を総出にすれば容易い……違反をすれば捕まる、それは神の世界でも同様なのじゃ……」

奈良富爾が目を細めて悟ると悠人に目を向けて今度は悠人に対して札を向けた。





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