ドラマチック・ロマンス
3*)恋をする

クリスマスシーズンは、花屋は大盛況だ。



「伊吹、午前中に来るお客さまの準備ちゃんと出来てる?」



花に水をやっていた俺に、ちょっとふくよかなお袋が聞いてくる。



花屋の仕事は外仕事。今日も寒いなぁ。

まぁ、慣れたけど。




「出来てっから。・・・でもよ、子供がバラの花束、五つっていくら何でもおかしいよな?」



昨日、小2くらいの男の子が一人尋ねて来たんだ。


花束、五つだそ? 大丈夫かって心配になるよな?


俺が、疑問を含め、眉間にシワを寄せて問いかけると、お袋はフンっといたずらっぽく笑った。



「色々な事情を抱えたお客さまがいるのよ。お客さまにはお客さまの考えていることがあるの。 私たちはお客さまに喜んで、笑顔で『ありがとう』って言って頂くことが最優先じゃない?」




お袋は、俺よりこの職業が長いぶん、沢山のお客さまを見ているのだろう。




「まぁ、そうだけど・・・・」



高校を卒業したと同時に、俺はこの世界に入った。 狭い世界だとも思うが、やり甲斐はずいぶんとあると思ってる。




「今日はクリスマスだし、お父さんとお出かけして来ても良いかしら?」


お袋は、フフっと微笑みながら、「夕飯は作っておくね!」と楽しそうにしている。



「どうぞ、行ってらっしゃい。」


いつまで立っても仲が良いな、とふと思ってしまう。
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