【完】矢野くん、ラブレターを受け取ってくれますか?
「ちょっと待ってください。なにかの間違いじゃ……」
母親の記憶ですらうっすらなのに、父親なんて全く覚えていない。
俺の父親は確か、母親が逮捕される1、2年前に離婚して……。
「そりゃそっか。口だけじゃ信じられないよね」
おじさんはそう言うと、ポケットからある1枚の写真を取り出した。
「これなら、信じてくれるかな?」
「これ……っ!」
おじさんが俺に差し出したのは、間違いなく小さい頃の俺と、母親と……今の面影がある若い頃のおじさんだった。
母親のことを知ってから、母親との写真は全て捨ててしまったけれど、何年も持っていたから母親の顔は覚えている。
「ウソ……だろ……」
俺は信じられなくて、言葉が出なくなった。
まさか、今になって父親が現れるなんて思ってもいなかった。