涙がこぼれる季節(とき)【完】
<吉崎修太郎>


周りのヤツらは、どうでもいい。


気にするな――。


自分に言い聞かせながら結衣の反応を待っていると、真顔でオレをみつめていた結衣の口元がほころんだ。


「係の仕事があるから先に帰ってって、昨日言ったのに」


結衣はそばにやって来ると、


「でも来てくれたんなら、修ちゃんも手伝って。終わったら一緒に帰ろ」


オレの腕をつかみ、元の場所に戻った。


「上の方、修ちゃんに貼ってもらお」


結衣が岡野に言うと、


「……結衣ちゃんと吉崎……つき合ってるとか言わないよね?」


横にいた桐谷が、おそるおそる疑問を口にした。


おそらく、教室中の疑問、を。


この場にいる全員――中には野球部員も何人かいたが、結衣とオレを見ていた。


そして、結衣はオレをみつめていた。

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