なみだのまえに

私たちは、高校3年生。
しかも、新しい年が始まったばかりの、冬休みといよりはお正月休みまっただ中。

互いの進学や就職を機に彼氏彼女と別れる、という話は特段珍しいことではない。

……それは、私だって分かっている。

でも、まさか。
クラスで一番仲がいい友達までもが、そんな波に乗るとは思っていなかった。

別れを告げた彼女──、茉莉果(まりか)は、確かに恋愛においてつつましい一途なタイプではなかったけれど、かといって、彼氏をとっかえひっかえするほど軽い性格というわけでもなかった。

今付き合っている……、いや、付き合っていた彼氏とだって、茉莉果は本当にラブラブで、私から見たらとても微笑ましくて、羨ましくて。

このまま高校を卒業したら、ふたりが遠距離恋愛になることは知っていたけれど、まさかこんなにあっさりと別れるなんて思ってもみなかった。


「理沙だって、遠距離はキツイと思ったから別れたんでしょ?早々に」

「え、あたし?
うーん、そういうつもりはなかったけど、今考えたらそういう気持ちもあったのかも。あの頃は、ただ単に受験勉強に専念したいから、っていうだけのつもりだったけど」

私の隣に座っている理沙も、高校に入ってすぐの頃から付き合っていた彼氏と、高3の夏休みに入る前に別れていた。

もともと成績がよく、真面目で優しい理沙。

理沙の元彼は私と同じクラスだからよく知っているけれど、その彼も真面目で、穏やかで、誠実で。
とてもお似合いのふたりだったから、理沙がその彼と別れたと聞いた時も、すごく驚いた。

それと同時に、時に真面目すぎる理沙らしいとも思ったけれど。
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