恋が、生まれました。*短篇集*
初めて、優しい言葉をくれた気がする。


「俺の事、嫌いなのってさ、おまえが怒られてばっかりだからだよな。でも、怒っていねぇよ、教育だよ。
だって、おまえを一人前のパティシエにするためだから。」



「はい。」


向井さんも考えてくれてるのに、私ってばふて腐れてばっかりだな。


「桃井は、良い笑顔持ってるんだから。」


自分にちょっと反省していると、向井さんを私は見上げるしか出来ない。


なんか、今日は向井さん機嫌良い?


私にこんなこと言ってくれた日なんかなかったのに、変なの。



いつもの厳しい35歳の向井さんじゃなくて、なんか優しい35歳。



「桃井は、俺の事嫌いかもしんねぇけど、俺はそうじゃないかもしんないよ。」


へっ?


向井さんは、「今はおまえとどうこうなるつもりは、さらさらないけど」とドアの方へ近づくと、





ドアノブを引き際に、私にはっきり言った。


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