語り話
相手が実は小心者だっただけかもしれないが、その時の僕には例えようのない達成感と興奮が沸き上がっていた。

誰かに無性に伝えたかった。

ううん。

誰かじゃない。

彼女に伝えたかった。

だけど彼女は消えてしまった。

いつものチャットルームにもいない。

個人チャットにも返信すらない。

なぜ彼女がこんな残酷なことをするのか、僕には理解できなかった。

普段の天使のように優しい彼女が恋しい。

だけど僕には彼女との間を埋める手段はなかった。




それから幾年か過ぎて、僕は高校生になった。

俗に言うバレンタインデーとか言うやつが来て、ゲンナリして帰ろうとする僕の背を追うようにして女子の声が飛んできた。

僕は目を疑った。

写真で見た彼女と全く同じ髪型をした女子が、僕に付きだしたのはチョコだった。

よくも回らない頭でチョコを受けとると、その子はやっと顔を上げて眩しいくらいの笑顔と一緒に走り去っていった。

それを茶化すのは僕の友達と言うやつだ。

見慣れない二文字が書かれた手紙付きのチョコ。

これは僕が心より望んでいた普通の青春。

だけど僕はやっぱりダメだね。

顔が彼女に似てないなんて思ってしまったんだから。


< 10 / 34 >

この作品をシェア

pagetop