誠を掲げる武士


コンビニの前の横断歩道を、青点滅の時に渡りきった時、前からぽんぽんっとボールが飛んできた。


えっ…、ボールやばいんちゃ…?!


その瞬間、私の横を子どもが横切った。


はっ、嘘やろ…!


自分は青点滅で横断歩道を渡ったということは、今は赤ということで…。


急いで振り返り子どもを確認すると、その子は道の真ん中で、ちょうどボールを抱えたところだった。


普段からあまり交通量が少ないところとはいえ、横断歩道には変わりはない。


「っぼく、危ないからはよ戻っておいで!!」


そう子どもに大声で伝えた瞬間であった。



「ププッー!!!!!!」


ものすごい音のクラクションが辺りに響いた。


音のした方へ視線をやると、向こうからトラックがやってきているではないか…!


そう認識した時には、私はなりふり構わず、その子どものところへと走り出していた。


遠くの方で、コンクリートとタイヤが激しく摩擦している音が聞こえる。



どうか、どうかっ、どうかっ…!!


間に合って──…!!!




自分の動きが、景色が、とても遅く感じる。



頭の中には、これまでの思い出が猛スピードで駆け巡っている。



ッあと少し…──!!!!



めいいっぱい伸ばした両手に、人の温もりを感じた瞬間。






< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop