心の裏側と素肌の境界線を越える為に
今…

何を言ってもうそくさい。

いや、言葉なんかで…

本当に深い傷は癒せない。

だから、全身で伝えたい。

俺の気持ちを、俺の鼓動を。



俺は片桐を引き寄せると、ただ抱き締めた。

ただ…強く抱き締めた。

その単純な行為に、いろんな思いを詰め込んで…。


片桐は目を瞑り、ゆっくりと…少し戸惑いながらも、俺を抱き締め返した。




その日。


暗くなるまで、抱き締め合った俺と片桐は、そのまま…別れた。

勿論、家まで送ったけど。

微笑みながら、別れる2人。

妙に照れてしまった。



「じゃあ」

「うん」


それだけのくすぐったい会話を交わし、離れる2人は…この上なく、幸せだった。
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