強引男子にご用心!

「だいたい、私に普通のおつきあいなんて無理無理。社会生活すらままならないのに、そこそこ親密な付き合いはもっと無理」

「無理と思い込むから無理だろう」

「そんな事を……」


言われても……?


って、後ろから?


水瀬はお茶を片手に眉を困らせてるから、慌てて振り返り、

「頭でばっかり考えてると、そんな風になるんだろうが」

不機嫌オーラ全開の磯村さんが立っていた。

「……な、何しに?」

「ケガ」

ヒラヒラさせる手のひらから滴る赤いもの。

「ちょっと、流血!?」

「手当てしますから、こっち来て座って下さいね」

お仕事モードに移行した水瀬が立ち上がり、私は邪魔にならないようにベッドの方に行く。

磯村さんはそんな私達を交互に見て、それからそれぞれのお弁当を見つける。

「伊原さんの友達って女医さん?」

椅子に座りながら不思議そうに言うから、少し眉をしかめた。


だったら何だと言うの。

無言でいたら、傷の具合を見ていた水瀬が肩を竦める。

「またパックリ切ったわね。営業部で何があったの」

「花瓶が落ちてきたので受けとめただけ……なんですが、手の中で割れまして」

「硝子?」

「硝子でしたね」

営業部にある硝子の花瓶?

あれかな。入口付近に飾ってあったヤツ。

営業部の子が毎日花を活けてたから放っておいた花瓶だ。

危なかった……かぁ。

「片付けに行きますね」

立ち上がりかけたら、磯村さんが手を振った。

「すでに連絡してありま……っ」

「ああ、ゴメンなさいね。少し痛いですよ~?」

にっこり傷口に消毒薬を吹き込む水瀬は、ある意味で怖い。

「破片はないみたいですね。利き手は右手ですか?」

「……はい」

「利き手じゃなくて良かったですね。ちょいちょい縫っちゃうので、麻酔はいらないですよね?」

そう言って離れた水瀬を見送り、磯村さんはチラリと私を見た。

「あんたの友達サド?」

鬼畜も似たような種族だと思うの。


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