強引男子にご用心!

「何だろう?」

「……思い付かないのね」

全く。
だって普通にしてるだけ、普通に出社をして、普通に仕事をして、普通に退社するだけ。

普通に生活……出来ていると思うけど。
違うのかしら?

違うって言われても解らない。

解らないから普通が出来ない?

水瀬は困ったような顔で見てるし、別に困らせたい訳じゃないのだけれど。

ああ、本当に世の中は多数決。

多数決に参加できない人間には、どうしたらいいかも解らない。


「……普通が、解らないかも」

ポツリと呟いたら、水瀬の手がピクリと反応した。


「誰も、あんたに普通になりなさいとはいってないわよ?」

「ああ。うん。まぁ、ね?」

うまく、言えないけど。

「それに言っておくけれど、あんたは異常じゃないわよ?」

「潔癖症は異常じゃないの?」

「汚いものが好きな方が変わっていると思うんだけれど?」

「でも、触れただけで気持ちわるくなる人もいないと思うの」

「少し極端なだけでしょうが。現に、どなたかさんとはキスしても吐いてない」

「…………」

そう……だけれど。

一度目は気持ち悪くなったけれど、吐けなかっただけだし、二度目の時は唇よりも手の方がムズムズした。

だから、手を洗いたくなったし。

そう言えば、前に触られた時も、気持ち悪くはならなかったな。

どちらかと言うとくすぐったくて、だけどゾクゾクもした。


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