強引男子にご用心!

確か2ヶ月くらい前の事。

役員会の会議室にお茶を持っていこうとして給湯室のドアを開けた。

開けた瞬間見えたもの。

それに驚いて瞬時にドアを閉めた。

絡み合う男女の姿。

キスをしながら、事務員系の制服のスカートを上げようとしている男の手。

違う階の給湯室を使おう。

決心して歩き出した背後で開かれたドアの音。

振り返ってみた先で、磯村さんに思い切り睨まれた。

そりゃ、磯村さんは先輩で、それなりに噂にもなる人だから、顔くらいは知っていた。

知っていたけれど、ファーストインパクトがインパクト有りすぎた。

そうねぇ。
確かにいい男の部類に属するだろう顔と身長。
営業成績も良い訳だから、モテるのは頷ける。

だからって、会社で何をしてくれちゃってるのよ、この男は!
と言う印象。

決してお近づきにはなりたくない。

なりたくないが……

どうして、レジにまでついてくる?


「何なんですか」

「いや。あんた面白いな~と思って」

「私は面白くありません」

「まぁ、そう言わず。あんた、目も悪くないんだな」

「どうして……」

と、言いかけて、仕事帰りの自転車で眼鏡を外した事を思い出した。

だて眼鏡だから自転車に乗るときは外す。

でも、何もそれを弁解する必要性はない。

無言でレジで支払いを済ませ、無言でエコバックに食材を突っ込み、無言で店を出ると、急いで自転車にまたがってマンションまで激走した。



今日はきっと厄日だ。

食材をビニール袋に入れて、そのまま冷蔵庫にしまい、いつもより念入りに歯磨きしてシャワーを浴びると、パジャマを着てそのまま寝室に向かった。

今日は何もせずに眠ろう。

とっても疲れたから。












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