強引男子にご用心!

この人は、なんて言うか。

「悩んでいる私が馬鹿みたいじゃないですか」

「馬鹿なんだろ?」

「人の潔癖症、甘くみてません?」

「前より馴染んできただろ?」

「………………」


もう何も言わない。


無言で資料保管室を出ると、無言で磯村さんもついてきた。


ついてくるから横目で見ると、それに気がついて楽しそうに首を傾げる。



……どうしよう。



大の大人が可愛い。



駄目だ。
駄目だ駄目だ駄目だ。

それってどうなの?
そういうのってどうなのよ。

大の男を可愛いと思うのってアリなのナシなの?

しかも年上。

年上の男の人よ?

決して可愛いスペックじゃないわよ。

どちらかと言ったら、黙っていたら良い男の分類に入るわよ?

黙っていないから大変なんだけれど。

でも黙っていたら、それはそれで困り果てるだろうけれど。

……確かに磯村さんて鬼畜だけど、見た目はハイスペックだと思う。

営業部の磯村さんはモテているはず。

ファンがいるくらいに。


確かに、惚れただのなんだのと言ってくれていたけれど、私はよくても人並み。

実はバリバリしたキャリアウーマンでもないし、しかも今は大掃除スタイル。


「磯村さんて、可愛い人が似合うと思うんだけれど」

ゴーグルとマスクを外し三角巾を取ると、ゴーグル以外を近くのごみ箱に捨ててからファイルを脇に抱えて手袋も脱ぐ。

それから眼鏡をかけようとして、磯村さんの手で阻まれた。



……さ、触るかと思った。


「きゅ、急に手を出してくるのはやめて下さい!」

「じゃないと、その伊達眼鏡をかけるだろうが」

かけるわよ。
それが正しいお局さまスタイルじゃないの。

「俺には、あんたが似合うと思う」

「な、何を……」

「見た目が可愛い女が、全部可愛いと思ってたら大間違いだぞ?」
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