鈴姫伝説 SideStory 番外編




 今は5月の始め。



 まだ夏じゃないのに、気温が少しずつ上がってきている。



 そして、クラスでは7月の半ばにある文化祭に向けて、準備の真っ最中なんだ。



 ガヤガヤと学校中がざわめきあっている。




「すーずかちゃんっ!」




 誰かの声がして、あたしの背中にドサリと体重がかかる。



 突然のことだったので、あたしは二、三歩よろめいてしまった。



 誰?



 後ろを振り返れば、クリーム色のフワフワのショートカットの女の子があたしに抱き着いている。





「あ、なんだ、莉緒(りお)か」



「なんだとは何よ━━っ!」



 莉緒はあたしの頬に自分の頬を擦り付けて来る。



 暑い!暑いって!



 この子、神崎 莉緒はあたしが高校に入ってからできた初めての友達だ。



 あたしの前の席だった、ということもあり、割とすぐに友達になった。




「すずかちゃん、準備できてるの?」



「そういう莉緒こそ、ちゃんとやっているの?」




 あたしたちのクラスは、文化祭当日はきっと、暑くなるからと、飲み物を売ることになっていた。



 そして今、あたしたちは屋台の飾りを作っている。





 ──はずなのだが、みんなふざけているのは気のせい?





「え、あたし?



 あたしはやってないよ?



 だって今、すずかちゃんのところにいるじゃん!」





 ・・・・・・そうですけど。




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