私を惚れさせて。私の虜になって。
「…くそ」

結局、松木には勝てないらしい。

「いいよ。ほんとに、気にしなくて」

傘でお互い顔は見えないけれど。

きっと大丈夫。

「なんか、…ありがと」

雨音できっと消えてしまった私の声。

「…松木、あとどんぐらい?」

「半分も来てねぇよ」

「つらー」

まーくんは崩れるように体をそらす。

「ちょ、雨かかる。汚れる。変な動きしないで」

「ごめ」

「まー、お前今日うるさい」

「ごめってば」

「だから変な動きすんな。靴汚れんだろ」

「…ちょーし乗んなよ」

「のってねぇよ」

「すがちゃん口悪い」

「そーりー」

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