私を惚れさせて。私の虜になって。
「どっちかだって、言ってんだろ」

「無理、やだ。」

帰ろう。

帰ればいいんだ。

何も言わずに、踵を返した。

「待てよっ」

「…何」

松木はまた、私を抱きしめる。

「泣かないんなら話せ。誰にも言わないから。な?」

「話したって、松木に何にもならないから」

「いいんだよ。すがちゃんになんかあれば」

「何にもない」

絶対、絶対。

話さないよ。

「離して。塾戻るから。勉強したいの」

松木はそれでも、離さない。
< 45 / 489 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop