眠れぬ夜に
裏山の猫
私が小学校中学年の頃
私のクラスは怪談話が原因の集団ヒステリーによって崩壊しかけたことがある

怪談に端を発する集団ヒステリーと言えばコックリさんやエンジェルさんが有名なのではないだろうか

どちらも根本的には同じ降霊術と呼ばれるもので
全国的に多くの学校で禁止されたものだ

私のクラスで起こった事件は
それらとは少し違う

所謂呪いや怨念の類だ

事の発端は
誰あろう私自身

私の学校は当時でも築10年ほどと歴史が浅く
定番の七不思議もまだ確立されていなかった

生徒達は不思議に飢え
やれ誰々が呪われただの
誰それは霊能者だのと
根も葉もない噂が蔓延していた

そんな折
私は裏山の雑木林の中に
木全体が猫の顔のように見える木を発見した

今にして思えば
それは単なるシミュラクラ現象
(三つの逆三角形に並んだ点を顔として認識してしまう脳の錯覚)
なのだろうが

当時の私には
確かに猫の顔に見えた

その事を級友に伝えると
俺も私もと
次々と賛同者が増えた

半日もすれば
クラス全員で裏山を睨みつける
異様な光景が展開された

そんな中
一人の女子生徒が事態を加速させた

『お姉ちゃんに聞いたことある、昔うちの生徒が裏山で猫に石をぶつけて殺しちゃったらしいよ』

その女生徒には虚言癖があり
普段なら誰も真に受けはしない

しかしその時は
実際に猫の顔のように見える木という演出のおかげで
彼女の話はリアリティーを獲得していた

何人かの女生徒が教室に駆け込み
泣き出す生徒まで現れた

第一発見者の私と
便乗して曰くを付加した彼女は
瞬く間に時の人となった

私自身
クラスの主役となる機会の少ない少年だったため
クラスの空気に反し
気分が良かった

その日の夜までは…
< 4 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop