僕と三課と冷徹な天使
コオと灰田

新歓やろう

吉田さんと約束したことを
すっかり忘れていたが、
しっかり吉田さんは覚えていて
週末に飲みに連れて行かれた。

危うく合コンにされるところだったが

「合コンだと、吉田さんの話を
 ゆっくり聞けないじゃないですか~」

と残念そうに言うと、

「おう!そうだよな!
 じゃあ三課の男だけで行こう!」

ということになった。

何故男だけなのかわからなかったが
合コンよりはマシなので
吉田さんの言うことを聞くことにした。

結局コオさんの昔話はたいして聞けず、

最近の合コン事情とか、
八木さんの競馬小話とか、

吉田さんが知らない女の子を
ナンパしようとして
僕が必死で止めたりとか、

とても疲れる飲み会だった。

その時に、

「そういえば、新人歓迎会してないですね」

とじゅんさんが言った。

「そういやそうだなあ。
 コオに言って、来週やるか」

吉田さんも同意した。

森本に営業部での新歓の話を聞いていたが
三課ではそういうことはしないのかも
と思っていたので、僕はうれしかった。

月曜、早速吉田さんがコオさんに

「今週末、新人歓迎会やろう」

と言ってくれた。

コオさんは一瞬固まったように見えた。

「あー・・・そろそろやらないとねえ。
 部長と課長の都合聞いとくわ」

と気が乗らなさそうな声で言った。

「部長も課長もいなくていいよ。
 三課だけでいいじゃん」

吉田さんが間髪いれず言う。

「そういうわけにはいかないって・・・」

「ちゃんと灰田を歓迎してやろうぜ。
 部長の予定聞いてたら、
 いつまでたってもできないぞ?
 お前、いまだに新歓やってもらえない
 灰田の気持ちも考えてやれよ」

ちょっと吉田さんは大げさだと思ったが
気持ちはうれしかった。

「わかったよ。
 週末予約しといて」

と仕方なさそうにコオさんは言った。

はあ、というため息が
コオさんから聞こえた気がして
こっそりコオさんの顔を見ると
とても憂鬱そうだった。

僕はちょっとショックだった。

僕の新歓のせいで、
コオさんにこんな顔をさせてしまった・・・

心の隅で膝を抱えて落ち込み始める僕。

でも『思ったことはできるだけ言って』
ってコオさん言ってたもんな。

膝を抱えている場合じゃない。

「忙しいのに、僕のためにすみません」

と言ってみた。

するとコオさんは

「いや、灰田のせいじゃないから。
 仕事は立て込んでるけど、何とかなる。
 こっちこそ、心配かけてごめん」

とやさしく言ってくれた。

「僕、もっと残業手伝います」

「うん。ありがとう」

いつもの笑顔よりは元気がないけど
笑ってくれたので僕は安心した。


いつものランチタイム。

今日はめずらしく部長がやってきた。

相変わらずヤキモチ焼きの僕は
何となく嫌な気分になる。

しかし、そこは社会人。

きちんと
「お疲れ様です」
と挨拶はする。

コオさんは挨拶もせず

「部長、今週末に
 灰田の新人歓迎会やるんですけど、
 空いてます?」

と聞いた。

「新歓、まだやっていなかったのか・・・
 残念だけど、週末は支社に出張なんだ」

部長が答えると
コオさんはあからさまに
『つかえねー』という顔をした。

見ている僕が部長の顔色を伺ってしまう。

でも
コオさんは部長に来てほしいんだなあ。

僕は部長が来なくてラッキーだと思ったけど。

またヤキモチがふくらむ。

いや、きっと
みんなで新歓やりたいだけだよね。

ポジティブに考えてみた。

コオさんのむっつりした顔を見て部長が

「あー・・・灰田君なら大丈夫だよ。
 灰田君、何かあったら頼むな。
 コオ、酒弱いから」

と僕に言った。

え、コオさん、お酒弱いんだ。

ものすごく強そうだけど・・・

それで気が乗らないんだ。
じゃあ僕はお酒をすすめないようにしよう。

僕もあまりお酒に強くないから
気持ちはわかる。

なんて考えていると

「飲まないのもつまんないしなあ・・・」

とコオさんがつぶやいた。

コオさん、お酒が嫌いなわけじゃないんだ。

じゃあ、何で憂鬱そうなんだろう?

何だかよくわからなくなってきた。

また思いきって聞いてみたいけど、
なんとなく部長の前じゃ聞けない。

・・・聞きたくない。

うーん、部長が邪魔、
と思っていると

「ごちそうさまでした」

とコオさんは立ち上がって
さっさと食堂を出て行ってしまった。

えー、いつもの食後のコーヒーは・・・

しょぼんとした僕に部長が

「あいつ、飲み会苦手だから
 ちょっと変だけど、
 あまり気にしないでやってな」

と言った。

余計なお世話、としか思えない僕だった。
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