僕と三課と冷徹な天使

再び

僕は気を取り直して、仕事をすすめた。

配属されたばかりのころと違って
ずいぶん色々な仕事を
任されるようになった。

仕事はたくさんある。

落ち込んでいる場合じゃない。

すると、コオさんが
誰かと話しながら帰ってきた。

おそるおそる見ると、
坂崎さんと一緒だった。

コオさんは僕をちらっと見て
坂崎さんと資料室に入っていく。

僕はまた落ち込みそうになったが、
三課のみんなが
熱いまなざしを送ってくれるので
立ち直らざるをえなかった。

少しすると、コオさんが僕に声をかけた。

「灰田、ちょっと来て。」

資料室の前で手招きをしている。

僕は立ち上がって資料室に向かった。

コオさんは

「うちの会社、再来年創立20周年だから
 今から記念誌を作るんだって。」

資料室に入りながら言った。

「ここに15周年の時の資料があるから
 坂崎さんが来たら、探して渡してほしい」

コオさんは資料室の上のほうの棚を指差しながら

「あそこらへんが5周年、
 その下が10周年・・・」

と説明してくれる。

僕は覚えられそうにないので、
ノートにメモを取る。

コオさんは僕のメモをのぞきながら説明を続けた。

「高いところにある資料は脚立を使って。
 ・・・高いところダメだっけ?」

あまり得意ではないが、
コオさんの指示は断らない主義だ。

「多分、大丈夫です」

不安が言葉に出るが、コオさんは気にしない。

「じゃ、よろしくね。
 わからないことがあったら、私に聞いて。
 坂崎さんにも頼っていいから。」

坂崎さんが微笑みながら頷く。

何だか、親密な感じ・・・

どす黒い嫉妬が心に流れてくる。

資料室から三課に戻ると
みんなちらちらと見ていた。

心配してくれているんだろうな・・・

僕は嫉妬心を
心の隅に追いやった。

「じゃ、灰田君、また来るからよろしくね」

と言って、坂崎さんは出て行った。

右手を上げて爽やかに
出て行く姿を見送りながら、
敵うはずねー、と僕は思った。
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