鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 ふぅ~、終わったぁ・・・・・・。


 だいぶ暑くなってきたせいで、少し動いただけでも汗が噴き出してくる。


 
「はあ━━っ、疲れた━━━っ!」



 家に着くなり、バタリと玄関に突っ伏した。



「おい、りん!


 こんなとこで寝るなっ!


 ちゃんとベッド行け」



「えー」



 そんなこと言われても、疲れちゃったもん。


 動くのもダルい・・・・・・。


 霊力も結構消費しちゃってるし・・・・・・。



 最近、魔物の出現することが多くなってきている。


 一週間くらい前なら、一週間に1回か2回、そして現れるのは1~2匹くらいだった。


 なのに、最近は・・・・・・ほぼ毎日、しかも1回に現れるのが5~6匹が当たり前になってきている。


 これは毎日学校に行き、勉強しながらのあたしには結構キツイ。


 しかも、お母さんのためのムギに力を送る祈りはなくなったものの、お母さんには霊力をちょっぴり送っているから、毎日霊力は底を尽きそうだ。


 

「最近、本当におかしいかも。


 ママが言ってたけど、魔物は影の世界っていう、封印された世界にしかいないハズなんだよね。


 でもたまに、こちらの世界と繋がっている『扉』をこじ開けてこちらの世界に来てしまう魔物がいるみたい。


 それをりんりんが退治してるけど、この数は余りにも異常だと思う」



 ナトが珍しく、低い声で言うと考え込んでしまう。


 確かに、あたしが知っている『鈴姫の記憶』でも、ナトが言っていたことと同じ。


 魔物はお母さんたちによって、影の世界に永遠に封印されたハズだったのに・・・・・・。


 最近、本当に何かがおかしい。


 変わり始めている。


 この、世界が。


 まるで、何かの前兆のよう・・・・・・。


 そのとき、突然フワリと身体が浮いて・・・・・・。




「っきゃ!」


「っよし、早くりんの部屋に行くぞ」



 耐え兼ねたのか、絖覇があたしをお姫様抱っこをして、階段を上り始めた。


 あたしの部屋へ向かっている・・・・・・。


 もう何度も行き来したことのある絖覇は、迷いなくどんどん進んでいくと、あたしの部屋の前で止まり、器用に部屋のドアを開けた。


 その後ろから、ナトもフワフワと入ってくる。


 そのまま、あたしはベッドの上へと下ろされた。



< 161 / 445 >

この作品をシェア

pagetop