鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 キスされたほっぺを押さえると、絖覇はニヤリといつものチャラい笑みを浮かべた。


 くっ・・・・・・!


 また釣られた!


 あの真剣な表情と低い声を出されると、いつもと違う絖覇に引きずり込まれてしまう。


 あたしが慌てると、いつもの調子に戻るんだから!


 本当に遊ばれてる!



「ほら、行くぞ」


 絖覇に引っ張られ、空き教室を後にする。


 そのとき、ふと思った。


 絖覇があの真剣な表情になったところを、他の人に見せているところを見たことがない。


 あの、低くてまるで別人のような声も・・・・・・。


 あたしにしか、見せたことがない・・・・・・。


 あたし、だけ・・・・・・。



 そんなことに気づいた途端、ボボボッと体温が上がった。



 特別というのは、どういうことだろうか。


 それでも、あたししか知らない絖覇の顔。





 もっと、もっと、あなたのことを知りたい。





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