この恋、永遠に。
 電話の相手は私がフォトフレームを買ったお店の店員だった。
 以前、街で見かけたアンティークなフォトフレーム。柊二さんへのクリスマスプレゼントを探しているとき、一目惚れしてしまったものである。彼が喜んでくれるかどうかは分からなかったが、このフォトフレームに二人の写真を飾りたかった。そう思って購入していたのだけれど、この前の事件で壊されてしまったのだ。

 柊二さんへのクリスマスプレゼントに、と考えていただけに相談することも出来ず、私は孝くんにお願いして、購入したお店に修理を依頼した。それが修理から戻ってくるのがクリスマスイブである二十四日、十七時頃だというのだ。

「はい。構いません。それでよろしくお願いします」

 仕方がない。少しギリギリになってしまうけれど、その日は平日で柊二さんだって仕事だ。どんなに早く仕事を切り上げても、十九時は過ぎるだろう。それまでに取りに行けばいい。
 私は電話を切るとカレンダーに十七時、とだけ書き込んだ。

「柊二さん、おかえりなさい」

「ただいま、美緒」

 私を気遣ってだろう、二十時前には帰宅する柊二さんを、私は夕食の用意をしながら待つ。彼がいつも帰宅する少し前にメールをくれるから、それを合図に料理の仕上げをして、インターホンが鳴ったら玄関まで彼を出迎えるのだ。

 ほとんどバリアフリーになっているこのマンションだが、玄関だけは十センチほどの高低差がある。この差を利用して柊二さんは、出掛けるときと帰宅したときは、必ず私に優しいキスをくれる。この瞬間がたまらなく好きだ。彼は本当に優しくしてくれる。

「今日も変わりなかった?」

 彼のコートと上着、そして鞄を受け取った私に柊二さんがネクタイを緩めながら優しい眼差しをくれる。私もにっこりと微笑んだ。

「はい。冷蔵庫の中身が減ってきたので、今井さんにお願いして食材を買ってきてもらいました」

 今井さんというのはこのマンションのコンシェルジュだ。私がこのマンションに来てから、随分よくしてもらっている。これも柊二さんの計らいなのだろう。

「随分仲良くなったんだね」

「うふふ。そうですね。柊二さんのおかげです」

 私が笑うと、彼も目を細めて私を見ていた。柊二さんから何度も向けられるこの眼差しはくすぐったい気持ちになる。でもとても安心する。
 私はまっすぐ寝室へ向かうとライティングデスクの上に鞄を置き、クローゼットに彼の上着を掛けた。

「ご飯にしますから、柊二さんも着替えたら来てくださいね」

 彼が外したネクタイも片付けながら言うと、分かった、と言いながらもう一度唇にキスを落とされた。柊二さんはスキンシップが好きらしい。
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