この恋、永遠に。
「それ、ピンクダイヤよね?ピンクダイヤのそんな大きなものって、ほとんどお目にかかれないわよ。どこかの有名人がそれよりもっと大きいものを何十億かで落札していたから……それには満たないとしても、相当値が張るのは間違いないわ」

 私はもう開いた口が塞がらない。そんな高価な指輪を贈ってもらった私は今までそれを知らずに身に着けていたなんて。
 するといつの間にかシャワーを終えた柊二さんが私の隣にやってきた。

「美緒に何を吹き込んでいるんだ?」

 濡れた髪はそのままに頭にタオルを被せた彼は、服を着てはいるものの、上半身は前が肌蹴たシャツ一枚だ。彼の引き締まった体が覗いていて、私はすぐに朱に染まる顔を逸らすと俯いた。何度見ても慣れなくてドキドキしてしまう。

「あらやだ、美緒ちゃんったら顔が真っ赤よ」

 水内さんは平気な顔をして私をからかう。私のほうが彼に免疫がないみたいだ。そんな私を見て柊二さんは目を細める。チュッと髪にキスを落とした。

「美緒はいいんだよ。そのままで」

 水内さんの存在などお構いなしである。

「それで?君は一体美緒に何を言ったんだ?」

 水内さんが笑った。

「美緒ちゃんのエンゲージリングのことよ。これがすごく高価なものだって話をしてたの」

 柊二さんが眉根を寄せる。

「そんなことは美緒は知らなくていいことだ」

「あら、いつかはわかるわよ。別に隠しているわけでもないんでしょう?」

「あ、あの、柊二さん……私、これがそんなに高価なものだなんてあまり分かっていなくて…その……」

 桁違いに高価だとは思っていたけど、さらに桁が違ったのだ。こんなに簡単に私の指にはまっていていいのだろうか、と少し怖くなってしまう。
 柊二さんが一瞬困った顔をした。そしてすぐに微笑む。

「前にも言っただろう?君の白くて細い指にはそれが似合うと思ったんだ。だから俺はそれを選んだ。君を想って選んだんだよ。お金の問題じゃないんだ」

「柊二さん………」

「君がそれを身に着けてくれるだけで俺は嬉しいんだ」

 柊二さんが私の頭をそっと撫でた。

「分かってくれた?」

 彼が顔を近づけて優しく微笑む。私は素直に頷いた。以前、ドレスをプレゼントしてくれたときもそうだった。あのドレスは……駄目になってしまったけれど……。彼は私が喜ぶと幸せそうに笑ってくれる。私がそうであるように、私が嬉しいと、彼も嬉しいのだ。
 私はにこりと微笑んだ。それを見た彼も安心した笑みを見せる。私から離れて支度を済ませると私の元へ戻ってきて、唇に優しいキスをくれた。

「行ってくるよ」

 そう言って彼は今日も会社に向かった。
 私がその後、水内さんに散々からかわれたのは言うまでもない。


< 119 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop