この恋、永遠に。

未来への扉

 淡いピンクのドレスに身を包んだ私は、何度も深呼吸を繰り返した。緊張しすぎて口から心臓が飛び出してしまいそうだ。

 今日はこれから日本屈指のこのホテルで、新規事業計画発表を兼ねた柊二さんの社長就任パーティーが開かれる。世界各国から多くの政治家・著名人が集まるのだ。本宮商事からも多くの社員が参加している。
 私は一度柊二さんの元を去ったときに本宮商事を退職した。が、今日私は社員として参加するのではない。


 私はもう二時間も前からこの控え室で準備に追われていた。柊二さんが手配したプロのメイクさんとスタイリストさんに全身を飾り立ててもらっている。
 鏡の中の私は、とても私とは思えない。いつもより少し濃いリップは私の幼い顔をほんの少し大人っぽく見せているし、自慢の黒髪はアップにして、サイドをゆるやかに垂らしてある。
 私が大きな鏡に向かって何度も深呼吸を繰り返していると、背後のドアが大きく開いた。

「美緒、支度はできた?」

「柊二さん!」

 鏡の中で柊二さんの姿を見つけた私は、振り向いて満面の笑みを浮かべた。そんな私に歩み寄った彼は、私をそっと抱きしめてくれる。

「綺麗だよ、美緒」

 少し体を屈めた柊二さんが私のこめかみに柔らかいキスをくれた。
 いつもは私のことを“可愛い”という柊二さんだけれど、今日は違った。
 私は柊二さんの温もりを感じながら、顔を上げるともう一度微笑む。彼も微笑み返してくれた。

 今日の柊二さんは、いつにも増して素敵だ。フォーマルなスーツに淡いブルーのラインが入ったグレーのネクタイが映えている。サラサラの黒い髪は今日は前髪を上げ、しっかりとセットされていた。ラフな服装も素敵だけれど、やっぱり私は柊二さんのスーツ姿が一番好きだ。真剣な表情も好きだけれど、こうして穏やかに笑った顔が一番いい。


 柊二さんからの二度目のプロポーズを受けてからもうすぐ二年。私の名前は本宮美緒になった。私の薬指には、あの時貰ったエンゲージリングの他にもう一つ、柊二さんとお揃いのマリッジリングが光っている。
 彼は私が彼の元を去って実家に帰った後、あらゆるつてと情報網、そして多分お金も使って、私の足が治せる医師を探してくれた。

 また、彼は同時にニューヨーク支社の社長に就任し、私のアメリカでの手術とリハビリをサポートしてくれたのだ。そのための準備を半年で整えてくれた彼には感謝するばかりだ。そして、私が黙って彼の家を出た後も、私を想って、諦めないでいてくれたことにも。

 今日、彼はこの本宮商事本社の社長に就任する。若すぎるという声もあったと聞いてはいるが、柊二さんなら出来ると私は信じている。前社長で、現会長のお義父さんもそう確信しているからこその今回の決断だと思うのだ。

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