この恋、永遠に。
「違います……。つ、付き合っているわけではなくて」

 咄嗟に思い浮かんだのは、恋人の存在を否定する言葉だった。これではまるで私が社内の誰かに片想いしているように聞こえてしまう。

「へぇ……」

 高科さんの顔に急に笑みが広がった。その時だった。廊下の向こうからやってきた女性が高科さんを見つけて大声で呼んだ。

「高科くん、いた!」

「斉藤さん?」

 自分を呼んだ女性の声がする方を振り返った高科さんは、人好きのする笑顔を見せた。つられて私もそちらを見ると、いつか初めて郵便物を営業部に運んだとき、高科さんと会話する私を鬼の形相で睨み付けていた女性だと分かった。

 彼女はピシッとした黒いスーツの下に、フリルの入った女性らしい淡いピンクのブラウスを合わせている。仕事の出来る素敵な女性、といったイメージだ。会社の制服を無難に着こなしている私とは全然違う。
 斉藤さんと呼ばれたその女性は、高科さんと一緒にいる私に気づき、鋭い視線を一瞬私に寄越したが、すぐに高科さんに向き直った。

「高科くん、部長が呼んでるよ。早く行った方がいいと思う」

「え、マジですか?」

「早く早く」

 高科さんの背を押すようにぐいぐいと急かす彼女に、高科さんは苦笑しながら私を見た。

「じゃあ僕はここで。渡辺さん、またね」

「あ、はい。ごちそうさまでした」

 私はペコリとお辞儀をする。頭を上げると、既に彼は斉藤さんに押されて営業部のドアをくぐるところだった。


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