この恋、永遠に。
 俺は反応のない彼女にそっと近づいた。ギシリと音を立ててベッドの縁に腰掛ける。彼女はぴくりともしない。
 ベッドの傍らのテーブルの上に、ミネラルウォーターと、簡単につまめる食べ物が置いてあったが、全く手が付けられていないようだ。

「美緒?」

 俺はもう一度呼びかけてみた。彼女の瞳が一瞬揺れた気がする。俺は思い切って彼女との距離を詰めると、彼女が包まるシーツごと抱きしめた。一瞬、彼女の体がビクリと強張る。

「美緒……」

 俺は彼女を抱きしめる腕に力を込めた。彼女の瞳が再び揺れ、ゆっくりと俺を視界の中へ捕らえる。焦点の定まらない視線を何度か彷徨わせたあと、僅かに口を開いた。

「………しゅ………」

 小さな声でかろうじてそれだけ聞き取れた。俺のことは認識できているのだ。

「美緒?俺が分かる?」

 俺の問いかけに彼女は小さく頷く。やはり彼女は分かっている。ずっとここでこうして座ったまま、食事も取らず、水もほとんど飲まず、彼女は何を思っていたのだろう。それを慮るとやるせなくなり、胸がきつく締め付けられる。大切な彼女を傷つけられた。それは俺にも重くのしかかる。

「少し水を飲んだ方がいい」

 俺は用意されていたミネラルウォーターのペットボトルを手にすると、まだ新品のそれのキャップを捻った。だが、美緒は首をわずか横に振る。飲まないと話すこともできないだろうに。

「少しでいいから」

 彼女の口元にペットボトルを差し出した。だが、彼女は口を開けない。何が彼女をここまで頑なにさせているのか。
 けれどそんなことを考えている余裕などない。一刻も早く彼女に水を飲ませ、少しでも食事をさせなければ。俺も焦っていた。

「美緒、ごめん」

 俺は一言謝ってから、ペットボトルに口を付けると自分の口の中に水を含んだ。そのまま彼女の口を強引に開かせ、口付ける。舌で水を押し込むようにして、彼女の口の中に流し込んだ。流しきれなかった水が彼女の顎を伝って零れ落ちるのを感じる。だが、彼女の喉が間違いなく上下する小さな音が響いた。

「……はぁ……」

 美緒が小さく喘いだ。俺はもう一度ペットボトルの水を口に含むと、彼女に口付け、水を飲ませた。今度は従順で、彼女はコクン、コクンと素直に水を飲み込んだ。

「まだ、飲める?」

「ん……」
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