この恋、永遠に。
『いえ、これが私の仕事ですからお気になさらず』

 電話の向こうで沢口が不敵に微笑む様が思い浮かんだ。

「ありがとう」

 簡単にお礼を言って電話を切る。沢口と孝たち夫婦には感謝するばかりだ。彼らがいなかったら美緒はどうなっていただろうと思うとゾッとする。

 電話を終えた俺は、廊下を抜けてリビングに戻ると、奥の寝室へと向かった。
 寝室では美緒が小さな体を丸めて静かな寝息を立てていた。彼女の荷物はとりあえずここに運ばせたが、何しろあの状態だ。ほとんど使えるようなものはなかった。
 今も彼女が着ているものは、俺が新しく用意させたナイトウェアだ。白いシルクのそれは彼女の白い滑らかな肌を際立たせている。

 俺はベッドの縁に静かに腰を降ろすと、起こさないように注意しながら、彼女の長い髪をそっと払った。閉じられた瞼にある長い睫はしっとりと濡れていて、頬にも涙痕がうっすらと残っている。こうして眠っていても、彼女はたまに怯えるように目を覚ましてしまうのだ。彼女は何かに怯えている。まだ捕まっていない犯人に?何か違和感を感じる。それを突き止めなければならない。

 美緒の涙の跡にそっと口付ける。ほんの僅かに身じろぎしたが、彼女は起きなかった。俺はほっと胸を撫で下ろす。彼女の安眠を守りたい。
 俺はサイドテーブルのパネルを操作して部屋の明るさを落とすと、彼女の隣に潜り込んだ。小さくなって眠る彼女を抱きしめるようにして横たわる。彼女が悪夢で目覚めないように、このまま朝までぐっすり眠れますように、と祈って。


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