俺様社長と秘密の契約
「あの時の事を覚えてるのか?」
少し震えた声で龍介が言った。

「…何も、覚えてないわ」
「…何も?」

「あの時の事は、ほとんど記憶がない…ただ怖かった…」
「…誰が、理子を助けたのかも、覚えてないか?」

「我に返った時、私の横にいたのは、龍介さんでしょう?」
「…」

私の言葉に、ただ黙って龍介は頷いた。

「…私は、貴方を許さないから」
「…理子」

それ以上言葉が出なかった。

…辛い思い出。
心の奥に、しまい込んだ辛い記憶。

龍介がそばにいる以上、この記憶は、ずっと消えない。

車は静かに、ホテルに入っていった。

…もう、逃げられない。

私は、手を握りしめた。
< 112 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop