俺様社長と秘密の契約
「…こけにしやがって」

今まで、温厚な人を演じてきた創だったが、本性を現した。

「…それから、これ、なんだかわかるか?」

そう言って、今度は、鞄の中から、大領の株主券を創に見せた。

「…それは」

創が持ってるばすのものだ。それがなぜ、龍吾の手にある?

「…まさかと思って、俺が社長に就任してから直ぐ、事が収まるまで、株主から、預かったものだ」

「…バカなことを言うな、あれは、確かに神宮寺前社長が、買い占めた筈」

「…神宮寺前社長が買い占めた株券は、すべて偽物。大体、こんなに大事なものをそう簡単に売るわけがないだろ?株主たちはみな、演技してたんだよ。…理子、お前に話さなくて悪かった。まさか、理子がこんな行動に出るとは思わなかったから」

龍吾の言葉に、理子は、首を何度も振った。

「…会社を、守ろうとしてくれたんだろ?」
「…」

理子は、俯いたまま涙が止まらなくなって、肩を震わせている。

「…理子を返してくれ」




「…返すわけないだろ?死んでも理子は返さない」


そう言った創は、控え室にあったカミソリを、理子の首に当てた。

「ふざけんな!何しやがる。そんなもの捨てろ‼犯罪者になりたいのか?」

「…理子が手に入らないなら、もう、何もかもどうでもいい。…理子さん、貴女が死んだら、私も後を追いますから」

そう言って、悲しげに微笑んだ創は、カミソリを振り上げた。
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