コエ。
1 出会い

ー今日もまた、コエが聞こえる。

一人の少女が泣いていた。
神社の石階段に座って。泣いていた。
どうしたの?と、聞くと。
「誰?」と言うので、ミエルのかい?と。
「見えない、でも聞こえる。」と、少女は声を振り絞るように答えるので。
私は、何かあったのか。と言った。
そして、無理をしないでと優しく言った。
すると、少女は「気味が悪い。」と言う。何がだ?と聞くと、「私が。」と。
どこが?と聞くと、「分からない。」と。
私が何物なのか、分かるかい?と聞くと、少女は「妖怪だ。」と。
なんで、分かるのだ?と聞くと、少女は

私は聞こえて他の人は聞こえないからと。

私は納得した。妖怪の姿が見える者が居ると言うのは何度か聞いたことがあるが。
声だけが聞こえる者は初めてみた。
姿は見えないと。恐らく、泣いているのも声が聞こえるのが原因なのだろう。
だから、気味が悪いと言われるのだろう。
人間は、愚かだ。
昔、母が言っていたことは本当なのだな。 
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