きみは、わたしの名前を呼んではくれない。


「くぅ、敗北感……」


「え、なに」


「ナンデモナイデス」



そう、別になんでもないんです。


その長い睫毛が羨ましいとか、透き通るようなキメ細かな肌がうらめしいとか、さらさらツヤツヤの女子力高すぎるその黒髪はどんなケアしてるんですか教えてくださいとか。


そんな女子力高いのに背は高いし、声はほどよく低くてかっこいいし、骨ばった長い指はちゃんと男の子で、なんだよこりゃモテるわけだ。

神様サマ不公平すぎるよ、つらいよわたし。



……だなんて。

別に、断じて、これっっっぽっちも、そんなこと思ってないので安心してくださいおにいさん。



「……で、ええっと、古典のノートだっけ?」

「うん、かしてくれる?」


そんなこと聞かなくてもわかってるくせに。

いつもなんだかんだで授業中寝てばっかしのコウくんにノートかしてあげてるじゃないか。


わたしってば優しい女だ。

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