大切なものはつくらないって言っていたくせに
幻のキス
いつから、瀬田祐樹は私のことを惑わすようになったのだろう。
常連客と店のスタッフで、友人。時には、兄と妹のようにも話せる相手。
瀬田祐樹も、赤裸々に自分の女遍歴の武勇伝を私に話していたし、私を1人の女性として恋愛対象の相手として見るような事は一度もなかった。
私にも日本に待たせている彼氏がいたし、そのことについても瀬田祐樹は知っていた。
でも、私たち2人の近くにいたフェルは、瀬田さんは私にずっと思いを寄せていた事に前から気が付いていたとある時私に告げた。
「嘘。」
私は、嫌悪感丸出しでフェルに反論した。
フェルは、苦笑して
「残念。あんたと祐樹とならうまくいっても祝福してあげられると思ってたんだけど。 人生って思い通りにならないものよね。」
「…………。」
「その子、祐樹の子でしょ?」
フェルは、まだ目立たない私のお腹のあたりを指差して言った。
私は、目を丸くして驚いた。
「なんで?知ってるの?」
「わかるわよ。オカマをナメないでよ。」
「……………。」
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