今度こそ、練愛

「さて、どうするかなあ……」



駅のホームの待合室で、山中さんが天井を見上げて大きく息を吐いた。



今から私の田舎に帰るところ。
足元には手土産の入った大きな紙袋と、小ぶりのキャリーバッグ。まもなく電車は到着するというのに、私たちはちっとも落ち着かない。



時々手を握り締めて、顔を見合わせたり首を傾げたり。急に湧いて出た悩みではないけれど、解決策が見つからなくて困り果てていた。



「どうするって、正直に話すしかないですよね……、黙ってる訳にはいかないんですから」

「だよなあ……、問題はどこから話すか、じゃないかなあ?」



口を開けば溜め息が溢れる。



「妹には全部話したんですよ、でもね、母に全部話していいものかなあ……って思いません?」

「また疑われそうだよな、実は今回も俺が彼氏のふりしてるんじゃないかと思われそう」

「山中さんは山中さんですよ、名刺でも見せます?」

「名刺ぐらい簡単に作れるだろう? 疑い始めたら簡単には信用してくれないかもなあ……」



私たちの悩みはひとつ。
山中さんのことを昭仁だと思い込んでいる母に、どうやって山中さんを紹介するのか。





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