鬼部長と偽装恋愛はじめました
「ね、ねえ、どいて……」

祐平に限って、無理やり襲うことはしないだろうけど、雰囲気を作るのはダメだと思う。

だけど祐平は、まるで動かなくて、笑みを浮かべて私を見下ろしていた。

「香奈美のさ、不器用なところは嫌いじゃない。それから、一生懸命なところも、突拍子もない行動を取るところも、社内で唯一オレが振り回されてるとこも」

「え……? どういう意味?」

「気付かなかった? オレが仕事をするなかで、オレを振り回してるのはお前だけなんだけど。いつもいつも、突っかかって、でもそれは的外れな意見じゃない」

祐平は、笑みをみせたまま続ける。

「どうやったらお前に伝わるんだろうって、そればかり考えてた」

「そうだったの? 全然、気付かなかった……。だって、祐平は怖いんだもん」

そう言うと、祐平は私をギュッと抱きしめた。

温かくて、締まった体に、私の胸はこれ以上になく高鳴る。

「オレは怖くなんかないよ。元カノにすら、ドライだったオレが、お前と一緒にいることを楽しいって感じてる」

そう言った祐平は顔を上げると、私に唇を重ねた。
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