鬼部長と偽装恋愛はじめました
どんな仕事でも、たいていは前向きにこなせるのに、祐平と香坂さんの仲が気になるだけで、こんなに憂鬱に感じるなんて……。

「失礼します」

指示通りに資料を作り、総務へ持っていくと、香坂さんは会議室にいると言われて向かう。

総務部の端にある三つの会議室は、研修などで頻繁に使われていた。

その内の中央の部屋へ入ると、香坂さんがペットボトルのお茶を、丸テーブルに並べているところだった。

「失礼します……。若狭部長に頼まれて、資料をお持ちしました」

「ああ、ありがとうございます。たしか、本城さんですよね? 体調は大丈夫なんですか?」

にこやかな笑みを浮かべて、香坂さんは私から資料を受け取った。

「は、はい。すみませんでした。ご迷惑をおかけして……」

会話をするだけで緊張して、視線をなかなか合わせられない。

それに、改めて見るとキレイで優しそうな雰囲気もあって、祐平が好きになるのも分かる……。

「ねえ、本城さんって、祐平の彼女なんですか?」

突然言われた香坂さんの言葉に、私は動揺した。
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