佐伯先生×ゆあちゃん【短編集】
「15分?」

彼女は顔の横で爪を見せた。
指の関節を曲げ、ちょうど猫の真似をするようにして。

「…ネイルか?」

「そう、ここに来る前に行ってきたの。雪だるまのお爪にはやがわり~」

青と白で色付けされた彼女の爪には、確かに雪だるまが描かれていた。

「一時間は、なににもぶつけないようにしてくださいって言われたから、だから完全に乾くまでじっとしてたの」

そういうことか。
僕は安心して自席に座った。

後を追いかけるようにゆあがついてきて、僕と椅子の背もたれの間に滑り込む。

爪をぶつけないように慎重に後ろから手を回し、ぎこちなく抱きつかれた。

「おつめきれいになった~ふふふ」

僕越しに爪をみていた。

「別にそんなことをしなくても君の手はいつもきれいだろう」

「ほんとう? やったぁ」

「だがこの季節らしいと思う」

「良かった~」
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