佐伯先生×ゆあちゃん【短編集】
キスチョコレート
2月14日は気が重い。

好きでもない人間–––もとい顔も知らない人からチョコレートを渡されて、受け取らないとまるで極悪非道な行いをしたかのように周囲から責められる。

ただもらうだけならまだしも、長い前置きのある妙な告白に付き合わなくてはならない。
気分がいいとは言えない状態で研究室のドアを開けた。

山積まれたプレゼントの箱と–––
床に座って無心にチョコレートにかぶりついている子がいた。

「葉月くん…なにをしてるんだ」

歩み寄ったら見上げられた。

「ちょこがいっぱいあったから、たべてる」

彼女の口の周りには小さな子どもみたいにチョコがついている。
だけどそんなことは構うまいとむしゃむしゃ食べていた。
甘味全般が好きな彼女はチョコレートにも目がないのだろう。

自席に座った。
そこら中に包装紙が散らばっているのが見える。
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