白雪姫の願いごと




思わずグルグルと考え込んでしまった私に、「お前はどう思った?」とマサ君が声をかけてきた。


それを聞いた私は一旦考えるのをやめると、その時思った答えを素直に口にした。



「なんだか、『ヘンゼルとグレーテル』みたいだな、って……」



改めて口に出してみて、私はなんて幼稚な考えだろうと少し落ち込んだ。


――『ヘンゼルとグレーテル』といえば、世界的にも有名なグリム童話のお話のひとつだ。


意地悪な継母と、その継母に言いくるめられた父親に捨てられた兄妹が森をさまよった末、森の奥に住んでいた悪い魔女を倒して帰ってきて、生き残って二人の帰りをずっと待っていた父親と3人で死ぬまで幸せに暮らすお話。


私は葉月の話を聞いてからずっと、その話が頭をよぎっていた。


幼い頃、養子に出された葉月。住んでいた家が焼け、自分の帰る場所――父親の居場所を捜す葉月。


細かい点は色々と違うけれど、考えれば考えるほど、あの有名なお話に似ている気がしたのだ。



(なんて、こんな事考えたら葉月に失礼だよね――)


そう思いながら一応マサ君に伝えれば、彼は興味深そうにひとつ頷いて



「……覚えておこう」



そう言って、部屋を出て行った。


その後姿を見つめながら、私はそういえば、と思い出す。


マサ君に頭を下げた後、顔を上げた彼女はどうして――一瞬だけ、まるで地獄の鬼のようなほの暗い表情で笑っていたのだろう、と。




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