How much?!


「マジで寒いの?」

「………はい」


身体の芯から完全に冷え切っている。

背筋がゾクゾクして、震えが止まらない。

そんな私のおでこに手を当てた彼。


「熱いな」

「え?」

「寒い中待ってたから、風邪を引いたんだろ」


嘘っ?!

自分の手を額に当て、体温を確かめる。

いまいちよく解らない。

だけどそう言われてみると、確かに身体が怠い。


「ちょっと待ってろ」


彼はベッドから起き上がり、寝室を出て行った。


次第に頭がボーっとして来た。

彼の言う通り、完全に風邪を引いてしまったようだ。

どうりで寒いわけだ。


「小町、これ飲めるか?」

「…………はい」


彼に支えられほんの少し上体を起こし、風邪薬を飲む。

そして、額には冷却シートが貼られた。


乱れた髪を優しく梳く指先。

肩口を冷やさないようにと、布団を手繰り寄せる手。

常夜灯の薄明かりの中、心配そうに見下ろす優しい眼差し。


もしかすると、これが本当の彼……なのかな?


意識朦朧とする中、無意識に髪を撫でる彼の手を掴む。


「寒いのは頭じゃなくて、………背中です」


擦るなら背中を擦って貰いたい。

少しでも温かくなるように……。


「ったく……」


彼は盛大な溜息を零して、布団の中へ潜りこんで来た。

そして、震え気味の私の身体を優しく抱きしめる。

そーっと優しく背中を撫でながら……。


「これでも寒いか?」

「………少し」

「フッ。少しなら我慢しろ」

「…………はい」


心地いい温かさと仄かに香る優しい柑橘系の香り。

彼の鼓動に誘われるように。


私は彼の腕の中で眠りについた―――――。


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