How much?!


太腿の中腹辺りで急停止した指先。

不安と緊張と……認めたくない不謹慎な感情に、胸が煩いほどに暴れている。


「ここら辺がチラッと見えたら、俺………落ちるかも」

「ふぇっ?」


おおおおお、落ちる………って??

それって、私の勝ちって事?!

一瞬、一縷の光が見えた気がして彼の顔に視線を向けると、


「フフッ、マジにすんなって」

「ッ?!」

「まぁ、脚が綺麗な女は好きだけどな」


妖艶な眼差しを向けた彼は、何事も無かったように体勢を戻した。

ハンドルを握り、シフトをドライブに入れ……。


「降りろ」


既に前を向いている彼。

視線すら合そうとしない。


「鍵、有難うございましたッ!おやすみなさいっ!!」


私は吐き捨てるようにして車を降りた。

すると、クラクションを鳴らす事もせず、彼は颯爽と帰って行った。


もうッ! 何なの~?

優しい顔をしたかと思えば、ムカつく男に大変身しちゃうし!

これも奴の手口なのかと思うと、動揺してる自分が情けない。


一気に疲れが出て来た私は、重い足取りで自宅へと戻った。



リビングのソファに倒れ込むと、コートのポケットの中でブブブッと携帯が震えている。

相手が誰なのか想像がつくだけに、溜息が溢れ出す。


ポケットからスマホを取り出し、メールを確認すると。


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