How much?!


パソコンに向い、黙々とデータを入力していた。

手元の資料とパソコンのモニターを交互に見ながら、顏色一つ変えず。


俺はそんな彼女のもとへ歩み寄ろうとすると、抱きつかんばかりの女子社員がより一層黄色い声を上げた。


すると、パソコンから視線を外した彼女は分厚いファイルを手にして、自分の机に叩きつけた。

その音は事務所内に響き渡るほどで――――。


一瞬で静寂に包まれた事務所。

誰もがからくり人形のように視線を彼女へと向ける。


けれど、彼女はそんな視線にも動じず、再びパソコンに向いデータを入力し始めた。

顔色一つ変えずに。



彼女に近づきたくて事務所まで来たが、返って仕事の邪魔をしてしまったらしい。

彼女の言葉で表現するなら、『就業時間内にすべき事では無い!』それに尽きると思う。



俺は踵を返して、自分のデスクへと戻った。




それからというもの、俺と彼女との接点は皆無に等しく。

あったとしても、データファイルの担当者欄に『早坂』と記されている程度で。


不足箇所があれば、彼女に内線して来て貰おうかと考えた事もあるが、彼女のデータ管理は完璧そのもの。

抜けている箇所が無く、内線する口実が見つからない。



そんな風に想いばかりが募り、気付けば3年の月日が経とうとしていた。


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