二人のプリンセス
プロローグ
それは、アクアの遠い記憶だった。
忘れたくても忘れることのできない深く痛い心の傷。


目覚めるとアクアは暗い闇の中に立っていた。
「ここはどこ?」


その時、周りの景色が変わった。
ユラッと闇がゆらいだかと思うと、次の瞬間目の前に大きな庭が広がった。

「ここは……」
アクアには見覚えのある場所だった。
必死で自分の記憶を探る。


「私も仲間に入れてよ!!」
急に幼い少女の声が耳に届いた。
「え!?」
いつの間にか庭の端に4,5人の子供たちが集まっていた。
その集団から2,3メートル離れた所にさっきの声の持ち主がいた。

ここの町では珍しく真っ黒な髪の毛だった。瞳の色まで黒く、その年格好のわりには大人びた少女だった。


「あ……あの子。思い出した……」
ずっと記憶をたどり続けていたアクアが気がついたそのとき、
「ダメよ。アクアちゃんは入れてあげない」

突然名前を呼ばれたアクアはドキッとした。
しかしすぐに、それは自分でないことがわかった。

あの黒髪の少女だった。
彼女の名前もまたアクアというのだ。
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