年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
髪を拭きながら部屋に戻ると、大輔くんは落ち着かない様子で流しにもたれて立っていた。

入ってきた私の姿を見て、一瞬止まってから流しの方を向いた。

「俺の服、やっぱりでかいですね。沙羽さん細いし」

ケトルに水を入れて火にかけている。どうやら温かい飲み物を用意してくれるらしい。こういう気遣いが自然にできて、それは大輔くんだからなのか、美容師さんとして培われたスキルなのかはわからなかった。


彼の言う通り私はどちらかというと華奢なほうなので、シャツもズボンもブカブカで、袖も裾も何回も折り返してあった。

こういう格好はやっぱり照れて、彼のほうもなんとなく照れくさそうで、私たちの間に妙な空気が流れる。照れ隠しに頭をタオルでゴシゴシこすると、それを見た大輔くんが慌てて止めた。

「ああ、沙羽さん、そんな力いっぱい拭かないで! 座ってください、乾かします」

私を座らせてから洗面所からドライヤーを持ってきて、私の後ろに膝立ちになった。ヘアクリームを髪全体に馴染ませてから、地肌から髪の間を滑って、彼の指が丁寧に私の髪を乾かしていく。

その指の感触はやっぱり気持ち良くて、私はまた、ぼんやりしてきてしまった。


後ろからくすり、と笑う気配がする。


「沙羽さん、髪乾かす時いつも眠そうな顔しますね」

「んー、なんか妙に安心する。人に髪を触られるの、好きなんだ」


正確に言えば、大輔くんに触られるの、だけど。


「最初の時、爆睡でしたもんね」

「あれはね、アルコールが入ってて、しかも寒いところからあったかいところに移動したから、急に眠くなっちゃって。
普段から美容室で爆睡してる訳じゃないよ?」

「びっくりしましたよ、話してると思ってたらいつの間にか寝てたから。でもさきさん、モデルしてもらった時も、すごく眠そうでしたよ」
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