年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
もう何度も来たことがある瑞香のマンションのインターフォンを鳴らすと、出迎えてくれたのは旦那さんだった。夜遅くにすみません、と謝る私に、どうせ呼び出したのは瑞香でしょ、と逆に謝り返してくれた。
その旦那さんは今、寝室で子供二人を寝かしつけていて、瑞香はビール片手に恋愛話に興じている。やはりいい身分だ。


「で? あんたどうしたいの? 話を聞いている限りは、気持ちはわんこの方に向いてるみたいだけど」


バリバリとポテトチップスを三枚一気に噛み砕いて、私の口元にもほれ、と突きつけた。まるで私まで犬扱いだ。


「……多分、今好きなのは、大輔くんの方だと思う」


おとなしく口を開けると無造作に放り込まれた。ちょっと口の中に突き刺さって痛い。

「祥裄のことは、なんかもう友達というか、一緒に頑張る仲間、っていう感じにしか思えないというか……。一緒にいて気楽なのは変わらないけど、それだけというか」

「わんこのことは?」

「……付き合ってくれって言われて、めちゃくちゃ嬉しかったんだ。大輔くんが先輩の女の子と仲良さそうにしてるのが悔しくて落ち込んで。二人きりになったら妙にドキドキした。私を女扱いしてくれて、なんだか照れくさかった」

自分で言ってて恥ずかしくなって、私もビールの缶に手を伸ばす。一ケース買ったのにもうすでに半分になっていた。
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