年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
結婚すると決めたものの、急がずゆっくり準備するつもりが、主にうちの母親が急かすせいでバタバタと話が進んでいった。

手始めに祥裄が正式に私の家に挨拶に来て、いつも通りのソツのないいい男ぶりでお母さんを骨抜きにし、手堅い優等生面でお父さんも味方につけた。

式は挙げるつもりはない、挙げるとしても二人だけでひっそりと、と思っていた私に対して、真っ向から反対したのは意外にもお母さんではなくお父さんだった。

祥裄にお酒を勧められていい気分で酔っ払いながら、ちゃんと披露宴までやりなさい、一生に一度のことなんだから、といきなり言い出した。
そんなの興味なさそうに、お前の好きにすればいい、と言っていたはずなのに、と不満そうな顔をする私に、後からそっとお母さんが耳打ちしてくれた。


「お父さん、心の中じゃあんたの花嫁姿、楽しみにしてたのよ。多分、憧れてるのよ、父親の立場で結婚式に参加するの」


一人娘の私の式を逃せば、もうそんな機会はない。その機会を与えてあげるのも、一種の親孝行か、と思う。
お母さんは手回しよく、祥裄にもそんな話をしたらしい。

祥裄にしても、会社の上司への建前もあるし、私の好きにすればいいとは言っていたけれど、どうやら本心では一般的な式をできればそれに越したことはない、と思っているようだった。
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