年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
私が知らず知らずため息をつくと、運転中の祥裄はそれを横目で見て、苦笑した。

「うちの母親とは馬が合いそうにないもんな、お前」

「そういうわけじゃないけど」

「まあ最初くらいは我慢してくれ。……これからどうする? せっかくだし夜桜見物でもしていくか?」

車を走らせながら、窓の外に広がる桜並木を見て祥裄が言った。

気付けば桜が有名な公園のすぐ近く。季節はいつの間にか春を迎えて、街にはこれからいろんなことが新しく始まっていくような、活気に溢れた雰囲気が満ちている。


「ライトアップしてるらしいぞ。まだギリギリ時間は間に合う」


偶然通りかかったように見せかけているけど、きっと時間を調べるくらいはしてあったんだろう。こういう、人を喜ばせるポイントはきっちり押さえてるんだよなあ。


時間がギリギリだったのが逆に良かったのか駐車場は空いていて、祥裄と二人で公園内に足を踏み入れる。

自然な仕草で手が伸びてきて、繋いだ感触はしっくりと落ち着いた。こうやって外を手を繋いで歩くのは、そういえば別れて以来だ。

ライトアップされた桜はとても綺麗だった。真っ暗な中にぼわっと浮かび上がって、ひらひらと散っている様は、なんだか少し怖いくらい。

のんびりと歩く私の歩調に、祥裄は合わせてくれている。

付き合い始めた時は背の高い祥裄の歩く速さについていけなくて、女の子に合わせなさいよと何度も喧嘩したものだ。そう思うと案外、祥裄はそんなに女慣れしていなかったのかもしれない。

それに比べて、大輔くんは最初から私のペースを見てゆっくり歩いてくれていた。不器用なくせに、どこであんなスキル身につけたんだろう……。


気付けばそんなことを考えていて、はっとして大輔くんを頭の中から追い出した。


――また比べてた。バカじゃないの、私。

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