年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
辻井さんは慣れた様子で扉を開けて、どうぞ、と先に私を通してくれる。
オーセンティックなそのバーは、カウンターのみの狭いお店。先客は二人、それぞれ一人で静かにグラスを傾けている。

一番奥の二席に座ると、カウンターの中できっちり制服を着込んだバーテンダーがおしぼりを差し出してきた。渋くて物静かな感じの男性で、四十代くらいだろうか。

「珍しいですね。女性と一緒とは」
「たまには誰かと飲みたくなる時もあるんですよ」

親しげに話す様子はやっぱり常連のようだ。

店内の雰囲気のせいか、普段よりも色気が二倍増しになって、一人でアダルトな空間を作り出している。

「ご注文は?」

バーテンダーが私に丁寧に問いかける。いつも通りジントニックを頼むと、にこりと笑ってかしこまりました、と頷いた。

こんな正統派のバーはほとんど来たことがない。落ち着かないでいると、辻井さんが私を見て少し笑った。
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