年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
そう決意して、一度大きく息を吐く。
よし、と気合を入れ直したところで、携帯が鳴った。


『あ、沙羽? 下に着いたけど、もう出れるか?』

「出れるけど。……まだ予約の時間まで余裕あるよね? 一回部屋まで来てくれないかな」

『……なんで?』

「どうしても話したいことがあるの。落ち着いて話せたほうがいいし」


ここまで話をさせろ、と強硬に言い続けているんだから、祥裄のほうもそろそろ、話の内容に気づき始めてもいい頃だ。

もし、長引かせることで私の意志が変わるのを待とうとしているんなら。もうそんな期待をされても困る。

それでも祥裄は、しばらく無言で考えた後、はっきり言った。


『嫌だ』

「ちょっと……」

『話なら食事が終わった後にしてくれ。せっかくのフレンチがまずくなるような話は聞きたくない』

「レストランならキャンセルしよう、キャンセル料なら私が払う……」

『ばーか、金の話をしてるんじゃないんだよ。……話なら後でちゃんと聞く。だけど今日一日は俺に付き合え』


そう言ってぶちっと電話を切られてしまった。しばらく呆気にとられて携帯を見つめてから、仕方なく部屋を出る。
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